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技術コラム
2026/6/12(金)
トムソン加工の基本と応用:製造業者・設計者が知るべきポイント解説
※ 本コラムは、当社の「打ち抜き加工技術」のご紹介ページの補足記事として、当社の主力工法のひとつである「トムソン加工」について、より詳しく解説するものです。
トムソン加工を検討中の製造業者や設計者向けに、その特徴や加工工程、素材選びのポイントを分かりやすく解説。加工依頼前の疑問を解消し、効果的な打ち抜き加工を実現するための情報を提供します。
1. トムソン加工とは何か
トムソン加工は、専用の金型を使って材料を打ち抜く加工方法として知られています。
トムソン加工の定義
トムソン加工とは、刃物がついた金型(トムソン型)を用い、紙やプラスチックなどのシート素材を打ち抜く技術です。主に箱やパッケージの製造で使われ、形状を正確に切り取れるため、量産に向いています。型を押し当てるだけのシンプルな仕組みながら、仕上がりは高精度です。設計者や製造業者にとっては、複雑な形状も再現できる点が魅力的でしょう。

名称の由来と地域による呼び方の違い
「トムソン加工」の名前は、明治から大正時代にかけての歴史に由来します。アメリカのジョン・S・トムソン氏が1909年に設立した機械メーカーの打抜機が、主に西日本で広まりました。そのため関西では「トムソン加工」という呼び方が自然と定着していったのです。
一方で東日本では、当時ドイツで作られた「ビクトリア打抜機」を改造して使うことが多かったため、その略称から「ビク抜き」や「ビク型」と呼ばれるようになりました。
現代においても、発注先の印刷会社や加工業者が「ビク抜き」と表記している場合がありますが、トムソン加工を指しています。地域や工場の慣習によって呼び方が異なるだけで、加工方法としては同じです。当社では「ビク型」「トムソン型」のいずれの呼び方でもご相談を承っております。
主な加工工程の概要
加工は、まず設計に基づき専用の金型を製作するところから始まります。この金型をプレス機にセットし、素材を金型上に置いて打ち抜きます。打ち抜き後は製品ごとに切り離され、仕上がりや寸法をチェック。金型の形状で加工の仕上がりが左右されるため、精密な製作工程が重要です。加工自体は短時間で大量に処理できるため、生産効率も高いといえます。
特徴と利点の紹介
トムソン加工の大きな魅力は、切り口がきれいで、複雑な形も自在に打ち抜けることです。また、繰り返し使える金型により大量生産が可能なため、コスト面でも優位性があります。さらに、加工中に素材を熱や強い圧力で痛めにくく、デリケートな素材も扱いやすい点がプロに好まれます。こうした特徴は、パッケージデザインの幅を広げる大きな力となるでしょう。
2. 対応可能な素材と選び方
トムソン加工はさまざまな素材に対応可能で、用途や仕上がりイメージに合わせて選べます。
加工できる素材一覧
代表的な素材には、段ボール、紙、プラスチックシート、ゴム、革などがあります。厚みや硬さに応じて金型の刃の形状や強度を調整できるため、一般的な紙類から特殊素材まで幅広く対応可能です。特に包装やカードなどの製品では、紙や合成紙の利用が多い傾向です。用途に応じて厚みや質感を吟味しつつ、加工効率の良い素材を選ぶとよいでしょう。当社では両面テープ・フィルム・クッション材・金属箔など14,000種を超える材料を取り扱っておりますので、素材選定の段階から当社にご相談いただけます。
素材選定のポイント
素材選びでは、打ち抜き時の応力や刃物の耐久性を考慮します。硬すぎると金型が痛みやすく、柔らかすぎると切り口がしっかり仕上がらない場合も。さらに、素材の厚みや層構造も考慮し、加工機の対応可能範囲内で選ぶことが大切です。加えて、製品の用途に応じて耐久性や見た目の質感を検討しながら、トムソン加工に適した素材を見極めます。最適な素材の選定に迷われた際は、用途や求める性能をお伝えいただければ、当社より候補をご提案いたします。
素材別の注意点
たとえば段ボールは厚みがあり堅いため、金型の強度と精密さが求められます。薄手の紙素材は加工が容易ですが、切り口の破れやめくれに注意が必要です。プラスチックは素材の硬軟や構造により刃物の調整が必要ですし、革は表面の凹凸により加工時のずれが起こりやすいため経験が問われます。このように素材別の性質を理解し、適切な加工条件を設定することが成功の鍵です。
3. トムソン加工の活用シーン
トムソン加工は、印刷物のパッケージや名刺といったクリエイティブの分野から、ガスケットや電子パーツなどの工業分野まで、非常に幅広い場面で活用される加工方法です。
ハサミで切れる程度の硬さの素材であればほぼ対応できるため、用途を選ばない技術として知られています。ここでは、代表的な活用例を分野別に紹介します。
同人・販促グッズの制作
同人誌の表紙に窓を開けるための型抜き加工、ダイカットカードやしおり、型抜きステッカー、ドアノブプレート、アクリル製品のパッケージなど、多彩なアイテムに使われています。紙以外の素材にも対応しているため、素材にこだわりたいグッズにも活用可能です。
工業・電子パーツ
シリコンゴムやEPDMなどのガスケット・パッキン類、ポリエチレンフォームなどのスポンジ材、PETやポリカなどの樹脂フィルムの型抜きにも使われます。また、両面テープの素材だけをカットして台紙は残すハーフカット加工もトムソン加工の活用例です。
金属素材
厚さ0.3mm程度までの薄い鋼板やアルミプレート、真鍮、銅などの薄い金属箔の打ち抜きを得意とする専門工場も存在します。当社でも金属箔を含む複合材料の打ち抜き加工に対応しておりますので、お気軽にご相談ください。
トムソン加工は紙の型抜きのみにとどまらず、幅広い場面や素材において、ものづくりを支える技術です。
4. トムソン加工の工程詳細
金型の作製から打ち抜き、仕上げまで、各段階で細かな技術が活きています。
金型製作の流れ
金型はまず製品図面に基づいて設計され、刃部分を組み込んだベースが作られます。工場では金型の刃物部分に鋼材を使用し、耐久性と切れ味を兼ね備えた形に仕上げることが多いです。加工する素材や形状によってデザインを微調整し、最終的に組み立てられます。精度の高い金型があって初めて、安定したトムソン加工が実現されるのです。
刃(型)の種類と精度の比較
トムソン加工に使う型には、大きく分けて3種類あります。それぞれ精度やコスト、向いている素材が異なるため、作りたいものに合わせて選ぶことが大切です。
| 刃の種類 | 特徴 | 向いている用途 | コスト |
|---|---|---|---|
| トムソン刃(木型) | ベニヤ板に切り込んだ溝に鋼の刃を埋め込む、最も標準的な形式。刃を曲げる際にわずかな段差が生じることがある。 | パッケージや厚紙の加工。通常1週間程度の短納期に対応。 | 低〜中 |
| ピナクル刃(腐食刃) | 金属板を薬品で溶かして刃を作る方法で、つなぎ目がない。抜き断面がきれいに仕上がる。 | 薄いフィルムや精密な工業パーツ、ステッカーのハーフカットなど。 | 中〜高 |
| 彫刻刃 | 金属板を切削して刃を削り出す方法で、精度と耐久性に優れる。つなぎ目もない。 | 厚手の樹脂や金属箔の打ち抜きなど。 | 高 |
一般的な印刷物や箱の加工であれば、コストを優先して木型を選ぶのが現実的です。ステッカーや精密パーツのように、きれいな断面や高い寸法精度が求められる場合はピナクル刃が向いています。どの刃が適しているか判断が難しい場合も、用途や仕上がりイメージをお伝えいただければ、当社より最適な型をご提案いたします。
打ち抜き工程の説明
打ち抜きはプレス機に金型をセットし、その上に素材を載せて一気に押し切ります。刃の形が素材に正確にフィットしているため、どんな複雑な形状でも安定した抜き加工が可能です。生産ラインでは高速で連続的に行えるため、短時間で大量に製品が完成します。打ち抜き後は不要部分が外され、必要な形だけが切り出される仕組みです。
失敗しないためのデータ作成と入稿のコツ
トムソン加工で思い通りの仕上がりを得るには、データ作成段階で加工の制約を把握しておきましょう。デザインがどれだけ精巧でも、物理的な加工限界を超えた形状は再現できないためです。
データの色指定
カット線を「K100(黒)」、折り線・スジ押しを「C100(シアン)」、ミシン目を「M100(マゼンタ)」といった色で分けたレイヤーに、輪郭線データ(ベクターパス)として作成するのが一般的です。当社にご依頼いただく場合のデータ作成ガイドラインについては、お気軽にお問い合わせください。担当者が分かりやすくご案内いたします。
裁断ズレへの対応
トムソン加工では構造上、裁断する際に1〜3mm程度のズレが生じます。そのため、絵柄を作成する際には塗り足しを確保して、印刷範囲を仕上がりサイズより少し広めにとっておきましょう。
また、切れてはいけない文字などは、カット線から離して配置する設計が必要です。
再現できない形状に要注意
極端に鋭角な角や、複雑すぎる凹凸、直径2mm以下の微細な穴などは、木型自体が製作できなかったり、抜いた後に紙が詰まったりする場合があります。そのようなケースでは、当社より図面の修正案をご提案させていただきますので、まずはそのままの形状でご相談ください。
バリ(つなぎ目)は必ず残る
打ち抜いた後にパーツがバラバラにならないよう、ごくわずかなつなぎ目が残ります。バリは加工後に必ず発生するもので、不良品ではありません。
トムソン加工の特性や加工制約をあらかじめ把握して制作物をイメージしておくと、完成品とのズレが小さいでしょう。「データ上のパスが100%そのまま再現される」とは考えず、余裕を持った設計を心がけることが、トラブルを防ぐ一番の方法です。データ作成の段階でご不安な点がございましたら、入稿前に当社へお気軽にご相談ください。
品質管理のポイント
品質を保つためには、まず金型の刃先の摩耗を定期的にチェックすることが欠かせません。摩耗が進むと切れ味が落ち、切り口の品質に影響が出ます。また、打ち抜き圧力や素材の配置ズレも避けるべき要素です。当社では寸法精度の確認や破れ、バリの発生チェックを入念に行い、不良品の発生を防いでいます。こうした管理体制で、安定した品質の製品づくりをお約束いたします。
5. トムソン加工のよくある質問
はじめてトムソン加工をご依頼いただく際、何から確認すればいいか迷うことも多いはずです。この章では、設計者の方をはじめ、個人で制作をしたい方からよくいただくご質問をまとめました。発注前にざっと目を通しておくだけで、当社へのご相談がスムーズになります。
6. まとめ:トムソン加工活用のための重要ポイント
トムソン加工は専用金型による高精度な打ち抜き技術で、様々な素材に対応しつつ形状の自由度が高い点が魅力です。大量生産に適しており、コスト効率も優秀ですが、金型製作や素材選定には慎重さが求められます。
素材の性質を理解し、金型の精度や現場の品質管理を徹底すれば、安定した美しい仕上がりが実現するでしょう。これらのポイントを押さえることで、トムソン加工を効果的に活用し、製品の価値を高めることができます。
初めてのご利用でもご安心いただけるよう、当社が図面確認からお見積りまで丁寧にサポートいたします。トムソン加工をご検討の際は、お気軽に当社にご相談ください。
