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技術コラム

2025/3/26(水)

「ビク型」と「トムソン型」の違いについて

 打ち抜き加工業界では、「抜き型」は製品の品質や生産性を確保するために欠かせない存在です。

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 この「抜き型」には、トムソン型ビク型 という2つの呼び名があり、それらに聞き覚えのある方は多いのではないでしょうか?

 ただ、同じ意味で使われている言葉であるとの認識はあっても、例えば「どうして同じものに2つの異なる識別名が与えられているのか」というような少し踏み込んだ問いに対し「これまであえて特に深く気にしたことはなかった」と感じる人の占める割合はゼロではないと思われます。

 そこで今回は、そういったこの2つの名称の由来や歴史的背景についての小話を簡単にご紹介します。

トムソン型とは?

 まず トムソン型 という言葉には諸説ありますが、その1つによると、アメリカのジョン・トムソン氏 (1853-1926)* がオーナーを務めていたトムソン社 (Thomson National Press Company) の打ち抜き機に由来しており、それに使用される型に対する通称であった「トムソン型」が、より一般的な意味を持った言葉として業界に広く浸透していったものとされています。

 特に、西日本地域ではこの「トムソン型」という呼称がよく使われる傾向にあるようです。

 トムソン型は、主に紙や段ボールなどの素材の打ち抜き加工での使用がメインでしたが、近年では材料の進化に伴い、両面テープやフィルム、クッションといった低硬度の材料の打ち抜き加工に使用され、現在でも多くの製造現場で活用されています。

ビク型とは?

 一方 ビク型 という言葉は、ドイツのライプツィヒ (Leipzig) で製造されていた ビクトリア (Victoria)* 方式で造られた打ち抜き機に由来し、それに使用される型の呼び名「ビク型」がトムソン型と同様、もっと一般的な意味を持った言葉として浸透したものとされています。

 ビクトリア式の機器は東日本地域を中心に普及したとされ、そのような背景もあり「ビク型」という言葉を見聞きする機会が多い地域も東日本に集中しているようです。

 ビク型もトムソン型と同様に、紙や段ボールの打ち抜き加工から、両面テープ、フィルム、クッションの加工まで幅広く対応しているため、多くの製造現場で活用されております。

結局「トムソン型」と「ビク型」は同じもの?

 トムソン型とビク型は、元来それぞれが明確に異なる意味を持った言葉ではありましたが、時間の経過とともに言葉の意味が変化していき、「かつて異なるものを指していた2つの言葉は、共通する特定の種類の抜き型を指し示す言葉になった」と解釈することが現在では一般的になっています。

 もっと簡潔に言い換えると、「トムソン型 / ビク型」という言葉は、元々の意味での「トムソン型」と「ビク型」の指し示すそれぞれのものが共通して持っていたある特徴を満たしている型を一般的に表現する1つの語彙になったのです。

どちらの名称を使うべき?

 元々の意味を尊重するのもよいですし、歴史的背景や地域の慣習に従うのであるとすれば、現在主流とされている 西日本ではトムソン型東日本ではビク型 という使い分けが好まれるでしょう。とはいえ、双方が同じ意味合いの言葉であることは業界内ではおおよそ共通認識となっており、同時にそれら使い分けを強く意識する重要性が低くなっているのも事実です。(余談ですが、当社では「ビク型」という名称を通常使用しています。)

最後に

 情報源がはっきりとしていない伝聞情報が入り混じるこの件には不明瞭な点も多いため、このページで述べられている内容についても鵜呑みにすることなく「ここではそういった認識になっているのか」といったような1つの参考程度にとどめておくようにしてください。

 また、下記ページではビク型の技術的側面の話も紹介しています。

 興味があれば是非、業界の知識として覚えておき、話のネタなどにしてみてください!